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32cm




「やっぱ男は身長だよなー!」
「だよな。いくら強くっても、タッパねぇとカッコ悪ぃもんなぁー」

そんな言葉が聞こえて、湊は眉間の皺を一層険しくした。
くるりと振り返れば、わざとらしくもけらけら笑いながら同じ空手部員である奴らがこちらに言ってくる。

「まー湊はちっちゃくてもいーよなぁ?」
「でかいナイトがいるしなー」

ピキピキピキ
そんな音さえ聞こえそうな米神に、湊達を見ていた下級生達が小さく身震いした。

「てめぇらぁーー!!ぐっ、てめっ…!」
「おっとー残念だったなぁ湊。タッパの差はこんなとこにも出るんだぜー」

掴みかかろうとした湊だが、額に手を当てられては伸ばした両手は掠るだけだ。
なにせ湊は152cmの小柄な体躯に女顔であり、馬鹿にしてくる相手は190近くいかつい顔をした男達だ。腕の長さだけでもその違いは明白だった。

「てっめぇ、舐めてんじゃねー!選手になれなかった腹いせかよ!!」

そう、目前の生徒は次期大会の選考に湊が選ばれたのを妬んでいるのだ。それくらい湊だけじゃなく他の部活生達皆が知っている。ただ、彼にはそれなりに実力があったために咎めることができないでいるのだった。

「変な嫌がらせしてねーで、試合で俺に勝てばいーだろうがっ!」
「…てっめー…っ」

じたばたする湊を睨んでいる相手は、リーチの差を使って足を前へ繰り出した。
ガツッという音と共に腹にそれが命中すれば、周りが騒然とする。

「……っは、卑怯なマネしなきゃ俺に勝てねーのかよ…」
「はっ!てめーみたいな後輩に掘られるホモ野郎に負けっかよ。どーせ顧問に色仕掛けでもし…」

バーーン!!

「てめぇ先輩に今なんつったぁぁあ!!表ぇ出ろやぁあ!」
「こ、小十郎。今日休みじゃ…」
「先輩がいるのに誰が休むかよ!てめぇら、覚悟できてんだろうなァ?!」

湊を蹴った生徒が言い終わらないうちに、道場の扉が派手に開けられる。
そのままやってきた生徒──小十郎は、湊を囲んでいた生徒達を道場から引きずり出して行った。

「……っ、止めないと!」

道場の外から聞こえる鈍い音に、部活生達が青くなっていく。一部の生徒は外を見に行こうと歩き出したが、その流れよりも速く駈けだした湊は、惨劇が繰り広げられつつあるその場所に飛びこんだ。
目の前で引きずってきた2名の生徒相手に拳を奮っている小十郎は、湊にとって空手部の後輩である。
彼は誰もがうらやむ精悍な容姿を持ち、その身長は184cmと高い。普段は冷たく感じられるほどの人物なのだが、湊に関してだけは何故か沸点が低く、それが彼の特徴であり欠点でもあった。

「やめろ小十郎!俺は気にしてないから!」
「…先輩、でも!」

自分に暴力を奮った相手を殴ろうと振り上げられた腕。湊はそれにしがみつき、渾身の力で動きを止める。
長身で力も強い小十郎だが、湊の言う事だけは聞くのである。

「いいから。お前が俺の事大事にしてくれてるのは分かってるから、いいんだって。お前の手をこんなののために使っちゃ駄目だよ。」
「…先輩…うん、分かった。」

先ほどまで般若の形相で拳を振るっていた小十郎は、その表情を和らげいつもの男前な顔で微笑んだ。
それは、ここが男子校でなければ卒倒する女生徒が多数いるだろうくらいの笑みだ。否、女子がいなくても何人かの空手部員がその笑みを見て顔を赤くしているのだから、十分な威力だろう。

「ありがとな、俺のために。」

湊は自分より遙か高い位置にある後輩の頭に手をやり、そっと撫でてやる。その行為にうっとりするように目を細める姿はまるでペットだ。

「…なぁ、小十郎。俺もう部活終わりだから一緒に帰ろうか。今日は部屋に来るか?」
「ん。帰る。先輩と一緒にいたい。」

じゃあ行こうと湊はにこっと笑うと、伸びている生徒達はそのままに小十郎の手を引いて歩き出した。
その姿はなんとも不思議な光景に見えるが、空手部員達にとっては日常風景なのである。

「…先輩…」
「んー?」
「……」

ぎゅっと繋がれている手に力を込められて、湊は頭上の顔を見る。真っ赤な顔をした小十郎は男前でいつ見てもカッコイイが、それは他人からの目線であって。

「かわいい…もしかして、シたくなった?」
「……」

耳まで真っ赤な後輩は、先輩の言葉にこくりと首を縦に振る。湊はその可愛らしい顔には不釣り合いなにやりという表情をして、小十郎の首に両腕を伸ばした。

「…帰ったら、いっぱいごほーびあげるからな。」

背を屈ませ腰を抱いてきた後輩が可愛くてたまらない。背伸びをしてその唇に口づけた湊は楽しそうに笑うと、こう囁いた。

「…いっぱい啼かせてあげるからな、小十郎。」
「……っ」

ぎゅうと抱きしめる力が強くなるのは小十郎なりの照れ隠しだ。
湊にとっては、この長身の下級生は可愛い後輩で愛すべき恋人だった。
周りから見たらどう考えても自分が抱かれていると思われていようと、男前の後輩がバリタチと思われてしようと、そんなのは問題ではないのだ。

「お前がかわいいのは、俺だけが知ってればいいんだもんな。」
「…ん。」

さらに強く抱きしめられて、湊は嬉しそうに声を上げて笑った。

さぁ、今日はどうしてあげようか?






小さい先輩152cm×でっかい後輩184cm=32cmの差
名前は受け攻め逆っぽくなった(笑)






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2010/10/16